Liner notes: yellow By Goro Nakagawa

2000年リリースの『blue』に続くHaLoの色彩三部作の第二弾『yellow』が完成した。沖縄の座間味で撮影されたカバー写真に強烈な印象を受けたこともあってか、『blue』を聴いた時にぼくの中に浮かび上がった青は、水の色のイメージが強かった。そして今回『yellow』に耳を傾けることで浮かび上がってきた黄色は、光の色のイメージだ。

不思議なことに、実際の水の色はblueではないし、光の色もyellowではない。どちらの色もほんとうは無色透明なのだが、HaLoの『blue』には水の青を強く感じてしまうし、『yellow』には光の黄色を強く感じてしまう。別の言い方をするなら、HaLoの『blue』は水の音楽で、『yellow』は光の音楽のように思えるということになるのかもしれない。

『yellow』に何度も耳を傾けるうち、ぼくがいつのまにか思い浮かべていた言葉がある。それは「shadows and light」というものだ。奇しくもジョニ・ミッチェルが1980年に発表した傑作ライヴ・アルバムのタイトルでもあるが、HaLoの『yellow』を聴いていて、ぼくは黄色い光の存在だけではなく、その隣りに、あるいはその裏にある、影や闇の存在も強く意識させられたのだ。

言い方にもっとこだわるなら、HaLoの『yellow』は、光と影が織りなす音楽、あるいは光と闇が織りなす音楽ということになる。アルバムに収められているほとんどの曲から、ぼくは黄色に眩しく輝く光を感じ取ることができるが、それはその光を際立たせる影や闇もまた、その音楽の中に含まれているからだ。闇があってこそ光のありがたみが初めてわかるのであって、HaLoの『yellow』は、光と影とのコントラストの妙を音楽で鮮やかに表現しきっている作品だとぼくは思う。そして何よりもコントラストの強さを作り出しているのは、ayakoの言葉とそれを歌う声の力に負うところが大きい。

『blue』に水のイメージを感じたから言うわけではないが、そのアルバムでのayakoの言葉や歌は、どこか水の中をたゆたっているというか、ひとつの大きな流れの中に溶け込んでいるようなところがあった。しかし『yellow』では、彼女の言葉や歌声がすくっと前に出ていて、そこにひときわ明るい光があたっている。

もしもHaLoがayakoやプロデューサーの藤井暁、そして世界各地のミュージシャンから成る総合プロジェクトで、誰かがその中で傑出することは許されないという考え方なのであれば、ぼくの言っていることはお門違いもはなはだしいものになってしまうのだが、『blue』でのayakoは、あくまでもHaLoというプロジェクトの中の言葉と歌を担当する一メンバーに敢えてとどまっていると思えるところがほんの少しだけ感じられたのに対し、『yellow』での彼女は、一人前に出て、強い光のあたった言葉と歌とで、ほかのみんなを引っ張るようになってきているように思える。そしてぼくとしては、ayakoにより強い光のあたっているHaLoのほうが、つまりHaLoの中にいるayakoよりも、ayakoが導くHaLoのほうが絶対に面白いと考えている。

繰り返しになってしまうが、『blue』と『yellow』とを聴き比べてみて、ぼくが強く感じたのは、『yellow』ではayakoの言葉や歌がはっきりと明確に伝わるようになってきているということだ。日本語の歌が増えたとか、そういう問題だけではなく、言葉をしっかり伝えようという彼女の意志を、新しい音楽の中に感じ取ることができる。そしてHaLoのほかのプロジェクト・メンバー、すなわちプロデューサーやエンジニア、それに参加ミュージシャンたちもまた、彼女の姿勢に共感を抱き、全員が一体となって、言葉と声により強い光をあてたこの作品を作り上げている印象を受ける。

もうひとつ『blue』と『yellow』とを聴き比べてぼくが感じたのは、今回はいろんな意味で前作以上に「日本的」な作品に仕上がっているように思えることだ。あるいは中国や韓国、沖縄やハワイとの接点もあるので、「アジア的」な要素がより強く打ち出されていると言ってもいいかもしれない(ハワイもアジアにくっつけてしまうとはちょっと強引か)。そしてこれは決して詭弁や言葉遊びではないのだが、日本的なものやアジア的なものへのこだわりを見せることによって、『yellow』はよりインターナショナルな作品にも成り得ているのではないだろうか。

『blue』と『yellow』が世に出て、残るHaLoの三部作は『green』だけになった。まだ何の手がかりもないうちからこんなことを言うのはせっかちもはなはだしいのだろうが、『blue』が水で『yellow』が光なら、『green』は草や木が浮かび上がる作品になるのではないだろうかと、ぼくはひとり期待で胸を膨らませている。ゆっくりと水の中をたゆたい、力強い言葉と声で心の中の闇に光をあてたayakoは、きっと誰もが見たこともないような独自の『green』で、HaLo色彩三部作を見事に完結させてくれるに違いない。

中川五郎